【判断】実相流転(天⇒地)

 

【 熟 考 】

 

『検証』の徳目によって幾つかの選択肢を用意することが出来たなら二つ目に取り組むべきものは『熟考』の徳目です。

ここに於いて多少の時間を費やすことになりますが、より正確な結論を見い出すためには必要な熟考期間であるのです。

ここまで選び出して来た幾つかの選択肢を並べて一つずつ煮詰める作業をすることになります。

将棋の名人が長考に入るように次の一手ごとに何十手も何百手も先読みするのと同じように、自分が用意した選択肢を一つずつ深読みするのであります。

つまり選択した項目を起点にして普段の仕事や生活に当て嵌めて何処まで行けるか考えてみる…。

その時に自分の性格や他者の傾向性などを客観的に見られるなら尚更に現実的(具体的)な対策が見えてくるはずです。

そうした具体策を一つの選択肢ごとに可能な限り抽出することです。

ここでの長考のコツは細部に至るまでネガティブ思考(心配事に取り組む)を貫くことです。

まだ発想の段階であるからこそ想い描きの中であれば数々の失策も許される…。

この長考(深読み)の段階でポジティブ思考しか出来ないなら軽はずみな対策しか思い当たらず、いざ実践の時期に目先の小さな障害さえ予想出来ず早々と挫折を迎えることになります。

従って長考(深読み)の段階では想い付くだけの心配事(障害)を羅列してみて、それらの対策案を事細かく考えておく必要があります。

この長考(深読み)が深いか浅いかは経験量の違いで個人的な差異が現れるので、人生観の深みがある人ほど人格の香り高さを感じられるでしょう。

ここに於いて単略的思考しか出来ない人は、まだまだ自分自身の魂の傾向性が見えていないため、他者への配慮が思考の中に浮かび辛い状態にあります。

大方の人がポジティブ思考を割り切りだと勘違いしていますが、この割り切りが単なる切り捨てとなって自身の魂の品格まで一緒に切り捨てている事実に気付いていないのです。

このポジティブ思考についてはまた後ほど語りますが、判断の徳性を取り戻すための二つ目の徳目段階(熟考)では、ネガティブ思考を重要視することになります。

誰もが人生途上に於いて障害のない人生は有り得ないはずで、そこをポジティブに障害は無いと強がってみても虚しいばかりです。

むしろ事前に見える障害を受け止めて前向きに乗り越える思考と努力精進にこそ、ネガティブとポジティブを融和した人生観が構築されるのであります。

判断の徳性を取り戻すための二つ目の段階論として『熟考』について語ってまいりました。

人間としての懐の深さや人格の香り高さは、実に『熟考』の徳目を深め高めることで育まれるのであります。

 

 

徳性開発十大理念【判断】【継続】