06 へ (平衡)

 

人間とは何か?

この答えを正しく語れる人が幾人いるであろうか…。

人として生まれたからには、動植物たちとは違った人生の意義が確かに存在するということです。

人は一人では生きてゆけないし、たった一人では地上界に生まれ出ることすら出来ないのです。

人として生きている以上は、他の人との関わりなくしては、生活も人生もままならないでしょう。

神はあえて、そのように人間という霊長類を創造されたのであります。

人は人と支えあってこそ『人』である…。

どちらか一方が、他の一方の人を全て支えて受け持つだけでは、必ず何時か何処かでムリが生じて、人と人との接点に亀裂が入るのです。

こうしてみると人間関係には、どちらか一方のみに片寄ることのない、絶妙なバランスがあるように想えるのです。

 

化学の実験などで、皆さんも学生時代に一度や二度は触れたことのある天秤を想い出して下さい。

天秤は形の大小に関係なく、質量そのものの重さに比例してバランスを保つはずです。

数量の多少に関わらず、重量の総合によってバランスを保つはずです。

見た目の変化ではなく、実重量をのみ正直に結果として示してくるわけです。

人間関係においても、これと同じ法則が働いています。

見た目の優劣や損得のみでは相互の心が読み取り難く、その本質も掴みづらいということです。

この場合の重さとは、想さ(…すなわち想いの差)であって、お互いにどれほどの想い(相手に対する気持ち)を込めるかによって、両者の人間関係を測る天秤の針が右へ左へ傾くのであります。

この両者の想いの偏りを相互に歩み寄りながら、つねに微調整することこそ人間関係における『平衡』の徳目となるのであります。

 

この『平衡』の徳目(人間関係のバランス)を育むためには、限りなく私(自我)を薄めてゆかなければならないでしょう。

そこに根強く主観が蔓延っている心では、自我による先入観が常に相手の真相を歪めて解釈してしまい、この自我による思い込みが、自分の視点を常に重いもの(堅苦しいもの)にしてしまい、ましてや本人自身が自分自身を冷静な目で見渡せないがために、平衡(バランス)が崩れた責任を相手にのみ背負わせようとするのであります。

したがって『平衡』の徳目を磨く者は、その基礎段階に当たる『ほうし』の徳目を、日々の努力精進として積み重ね続ける人でなければならないということです。

私心なき無我献身を精神的バックボーンとして磨いている人であるからこそ、自分の我意による色眼鏡を外した視点で、客観的に自と他の想い入れの違いを確認できて、相互のバランスを微調整することが可能なのです。

人間とは、人の間に光(真実)があってこそ人間観が深まるのです。

間という文字を見て下さい…。

人と人とを隔てている門の中に、光(日)が置いてあります。

この光(日)こそ太陽の徳性そのものであり、この日(真実)に相互が向き合うことによってのみ間が保てるということであります。

外見のみでは表面的解釈しか出来ない上っ面な性格でしかないが、その背後関係を読み取る力は、すなわち相手の心境を深く洞察する内的作業であります。

そのために、お互いの間に日(真理)を失ってはならないのです。

人間関係が複数となり、相互の心境が複雑となればなるほど、人格的素養が試されることになります。

見た目だけで相手を見下したり、相互の力関係ばかり気になるようでは、まだ『平衡』の徳目以前の問題で、『ほうし』の徳目ですら空虚な現状であると思い知るべきであります。

つまり自己反省なき者には、徳性開発はありえないということを肝に銘ずるべきなのです。

 

人の数だけの個性があり、経験による差異があるにもかかわらず、個人的な先入観や極度の偏見で相手を規定することが如何に危険か…。

この事実を知らないばかりか知ろうともせずに、いつの間にか自分が加害者になって他者への罪作りをしていることもあるのです。

またそうした人ほど他者への責任転嫁が多いのも事実です。

寄せ引く波のように、時に応じ処に応じ人に応じて、臨機応変に対処できる人格者を目指すべきです。

お互いの意見を尊重しつつ、押したり引いたりしながら人間関係のバランスを微調整する貴方であって下さい。

『よせる波ひく波ありて細波の白く波立つ想い伝えし』

時には激しく寄せる波、時には平らかに凪いだ波、それら総ての波を包摂してこそ、愛は果てしなく進展を続けるものなのです。

宇宙に散りばめられた星々の共演。

銀河に凝縮された美しいまでの秩序と調和。

星間を貫いた目に見えない神秘な力。

そこに人間技では解決できない絶妙なバランス(平衡)が永々と繰り広げ続けられています。

その神技ともいえる距離間は、人間関係の平衡(バランス)にも十分参考になると想えます。

まだ親しくない相手の内面に土足でズカズカと入り込むことをせず、たとえ親しくなった相手にさえも一定の距離間を保てるような心のユトリ(豊かさ)を育んでいただきたい…。

 

 

 

17 徳性開発 【調和】