10 素朴

 

優美の理念を体現するための五つ目の徳目は『素朴』であります。

これは人間としての本来の姿に戻ると言うことです。

自然の一部である人間、神の子としての人間、そのままで完全円満な生命の実相としての人間…。

そうした本来の姿(魂の故郷)に立ち帰ると言うことです。

科学が発展し、文明の興隆期にあって、何かと便利なアイテムに囲まれた生活の中で、人類は人として大切な精神を見失ってきた歴史でありましたが、物質文明を得てもなお心が乱れることなく、純朴な原点を見失わずに生きることが大切であります。

そのためにも物理的な恩恵に溺れることなく、当初から具わった生命の尊さに感謝して、与えられた環境と境遇を素直に受け入れて、明るい気持ちで前向きに生きてゆく…。

素朴であると言うことは何事にも囚われない心持ちで生きると言うことです。

興味関心が強すぎると心身ともに沢山の重荷を背負って歩くことになり、その事実に気付くことなく時を重ねるなら、いつしか重荷が自重でもあるかのような錯覚に落ち入り、そのまま更に時を重ねれば魂に於いては負の財産(マイナスの傾向性)となって来世に持ち越すことになるのです。

人間の生命の実相には本来は何物も付着物は必要ありません。

そのままで完全円満な自己展開をするのが本筋なのです。

心(生命の実相)が根本にあって、その愛念を実現させるために必要なアイテムを後から引き寄せるのが正しい流れであります。

誰かのモノマネをして先に形(アイテム)だけを揃えて、後から大義名分を当て嵌める人生は本末転倒なのです。

『素朴』の徳目を磨くためには、そよ吹く風のような心持ちで付かず離れず…。

こうした一定の距離感を保つ工夫を要します。

どんなに興味関心が強くても、程よい頃合いで身を引く姿勢を貫くことです。

自他ともに少々物足りないぐらいで丁度良い…。

いったん身を引いて客観視することが出来れば、次回のトライは五分の力量でも十分に前回の域を越えてゆくでしょう。

あれこれと降りかかる恐怖観念を振り払うアイテムを用意する前に、ちょっと身を引いて全体像を眺望するだけで正しい道筋が確認出来るのです。

常に敵対するものを想定する人生には安住の地がありません。

もちろん魂の成育段階が初期にある場合は、本人の尺度を起点にして相対するものに臨むという姿勢も必要ですが、それでも一定の域に達すると闘わざることこそ道の極みであると悟られた宮本武蔵の心境に達するのです。

達人は自我を払拭する修行を積んでいるので、相手の動行が手に取るように見えるのであります。

そよ吹く風は全面に障害物があっても弄する事なく擦り抜けてゆきます。

向かうべき夢(目標地点)があるなら、強大な障害に当たって砕けるよりも、道(選択肢)を変えるという余裕(柔軟な心)も持ち合わせて下さい。

そのためにも『素朴』の徳目は磨き続ける価値があります。

 

 

 

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