069 白神伝承

(白神岬) 

 

ある日、三人の若者が白神岬から山に登った時、草に覆われた小さな祠を発見した。

さっそく村に帰って多くの仲間を連れて来たが、ついに祠は見つけられなかった。

またある日、一人の若者が山に入って祠を発見して印を付けて帰ったが、二度と祠は見つからなかった。

 

こうした口伝伝承がアイヌ神話には存在する。

北海道最南端に白神岬があるが、海側を見ると波の向こうに本州の竜飛岬が見える。

そこから山側を見ると奥まった所に白神山が聳えている。

また程遠くない所に赤神という地名があるそうだか、白神と赤神に関連する言い伝えもありそうである。

アイヌの人々は神の存在をカムイと言い、野生の熊を神の化身としているが、赤神・白神とは何れの神を意味するのであろうか…。

一度ならずも二度までも見つかった祠が、再び訪れると見当たらないのは何故であろうか…。

昔も今も神の存在はベールの向こう側に隠されている。

時には激しく逞しい存在であり、時として恐れ畏む存在でもあり、また優しく暖かい存在でもあって、人間の感性に感応しながら不思議な現象も神は起こすのであります。

白神岬に立つと、心地良い白波と爽やかな涼風に包まれる。

道南の美しさや季節の移り変わりは白神岬から始まると言っても過言ではない。

 

 

 

  29 黎明の風 【文化編】