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070 純愛伝承 |
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積丹半島の東側中間辺りには、海に突き出した黄金岬がある。 ここにもアイヌの悲しい伝説が残されている。 ある日、酋長の娘(名をチャシナという…)が召使の若者と恋に落ちた。 それを知った酋長は身分の違いもあって若者を牢獄に監禁した。 ちょうどそのころ沖合いでは海の怪物が頻繁に現れて、小舟が襲われるため漁が困難となっていたようだ。 酋長は村全体にオフレを出して、怪物を退治した者には酋長の娘を娶らせると宣言した。 屈強な男たちが幾度も怪物に挑んだが、悉く命を落として行った。 そこで酋長は監禁していた若者にも怪物退治を命じたのである。 若者はユメのお告げもあって見事に怪物を退治してみせた。 しかし酋長は最初から娘を娶らせるつもりはなかったのである。 それを知った娘は落胆して、せめてあの世で添い遂げたいと懇願し、細い小道を駆け上がり、岬の先端から身を投げて帰らぬ人となった。 若者も後を追って岬の先端から身を投げて命を絶ったのである。 現在、岬の先端に続く小道はチャシナの小道と言われている。 恋とは如此、若者に限らず一途な念いに駆り立てるものである。 その想いが純粋であればあるほど盲目にもなるであろうが、そこには打算も計略も無いからこそ、お互いの真心を深く信じ合えるのであろう。 黄金岬の海には宝島が若者の名残り(彼が被っていた兜だったと言われている)のように浮かび、岬の先端には海に身を投げた娘を悲しむかのように、紫の可憐な小花が点在している…。 |