072 八郎龍伝説

(十和田湖)

 

青森県十和田湖には八郎太郎の龍神伝説が残されている。

ある日、八郎太郎は仲間二人と一緒に山奥へ狩に出掛けた。

お昼ご飯は当番制で、その日は八郎太郎が当番であった。

大柄で優しい性格の八郎太郎は、山奥の小川で獲ってきた三匹の魚を焼いて、仲間が帰るのを待っていた。

いくら待っても仲間は帰らず、ついに八郎太郎は空腹に堪えられず一匹の魚を食べたのである。

すると魚は思った以上に美味しくて、ついに二匹目三匹目も平らげてしまった。

その途端に強い喉の渇きを覚えて、八郎太郎は山奥の沢に走り、湧き出る清水をゴクゴクと飲んだのである。

しかし幾ら飲んでも喉の渇きは治まらず、ついに腹這いになって清水を呑み続けた。

やがて八郎太郎の身体は龍に変わってしまったのである。

変わり果てた我が姿を恥じて、もう村には帰れないと悟った八郎太郎は、山間の沢を堰き止めて大きな湖を造り、その湖を自分の住処としたのだ。

これが十和田湖の始めであると言うのである。

その後、八郎太郎の伝説は、数々の逸話を残しながら変転を繰り返し、同じ境遇である田沢湖の龍女(たつこ姫)と結ばれることになる。

欲求は基本的には生命維持の為の内部要求であるが、極度の欲求は渇欲となって、心の安らぐ余地さえも失くすのであり、つまるところ行き付く先は性格も人格も貶めてしまうのである。

 

 

 

  29 黎明の風 【文化編】