075 御祖神伝承

(筑波山)1

 

関東平野の北東部に、二つの峰を連ねた山が佇んでいる。

それが日本百名山にも名を挙げられた筑波山である。

筑波山が標高786mでありながら百名山の一つに選ばれた理由は、古来から由緒ある伝承が、この地に残されているからであります。

ある日、天地一切の総てを造られた御祖神(みおやがみ)が、可愛い子神たちに逢いたいと旅をしておられた。

そうして駿河国に立ち寄った辺りで夜になったため、福慈山にて一夜の宿を乞い願ったのである。

ところが福慈山では貴い御祭の最中で人を忌み避けているため、御祖神であっても断らざる負えなかったようである。

御祖神は残念に想い、また更に旅を続けて常陸国まで辿り着いた。

そこで筑波山にて一夜の宿を乞い願ったのであります。

筑波山の子神も大切な御祭の最中であったが、貴い御祖神の申し入れを素直に受け止めて、温かいお食事を用意し、心から手厚く接待して一夜の宿を許したのであります。

その気立ての優しい持て成しに心から感嘆された御祖神は、次のような和歌を残されたのである。

 

うつくしきかも我が御子

高きかも神つ宮 

天地のむた

日月のむた 

人々集い賀ぎ

飲食にぎはひ

代々に絶ゆることなく 

日に日にいや栄えて 

千秋万歳 

楽しみきわまらじ

 

(天地…あめつち。賀ぎ…ことほぎ)

 

 

 

  29 黎明の風 【文化編】