081 姥捨山伝説

(筑北)

 

信州の筑北地区と千曲地区との境に姥捨山があるが、この山にも貴重な人間真理が込められた話が残されている。

昔この地域の殿様が大の老人嫌いであったため、60歳を越えた老人を山に捨てるようにとオフレを出した。

ある孝行息子が年老いた母を背負って姥捨山を登っていたが、母は息子の背中で小枝を折り、息子が帰り道で迷わぬように所々に帰りの道案内として小枝を落としてきた。

それを知った息子は母の大愛を感じて、殿様のオフレを破って年老いた母を自宅に連れて帰ったのである。

ちょうどその頃、殿様は隣国から無理難題を問われて国を攻められる危機にあったが、息子は母の智恵を用いて殿様の窮地を何度も救ったのであります。

その智恵が老人の生きた智恵であったことを知った殿様は、姥捨山に老人を捨てるオフレを無くしたのであった。

人間の智恵は経験を積むことによって深く広く根を張るような大樹に生長する。

知識は博学にはなるが、経験が浅ければ人格者としての深みがなく応用が効かないのである。

年輪を重ねた生きた智恵は人の心を豊かにする。

古き教えを総て捨て去る前に、その教えに込められたエッセンスを再確認する必要がある。

高齢者対策が叫ばれる昨今は視点を変えれば知性集大成の時代である。

環境が変化しても捨ててはならない徳育の大切さを、まだ多くの老人たちは肌身に染みて知っておられるのであります。

 

 

 

  29 黎明の風 【文化編】