012 代価の登場

 

 

遠い昔の物々交換では、お互いに物品を差し出して、相互の使用目的(利用価値)が合えば成立しましたが、相手側の物品が気に入ったとしても、自分側に相手側が求める物品が無ければ物々交換は成立しません。

そこで考え出されたものが代価でありました。

例えば形の良い貝殻などを手渡して、相手側が必要な物品が自分側の手に入った時に、何時でも交換するという代価であります。

現代人が扱う金銭取引の始まりであります。

この遠い昔に登場した代価には大切なものを付加しなければなりません。

それは貝殻(代価)を差し出したなら必ず物品を手渡すという信頼です。

代価を扱う相手との信頼が無ければ有り得ないシステムであります。

この信頼関係が代価の根元に在るからこそ、貝殻(代価)は価値あるもので居られたのです。

ここでも人間側に確固たる主体性がありました。

こうした代価制度が頻繁に行われる現代では、金銭(代価)そのものに依存してしまい、いつしか金銭側が主となり人間側が従となりました。

お金に仕事も生活も扱われる人間…。

こうした主従関係は、やがて人間関係から信頼関係を失なわせ、人間としての感情まで奪い取られてしまいました。

感覚には麻痺作用(慣れ親しみ)があり、この機能は忍耐には有用であります。

しかしこの麻痺作用が自己陶酔となれば、人間としての心(自己統制)が機能しなくなり、金銭に対する過剰なまでの依存をすることになります。

現代人が見失いがちな金銭感覚は、人間としての心が不在となった危険信号なのであります。

 

 

 

31 水龍の旅 【経済編】