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011 アイヌ民族の伝統史は口伝 |
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日本の北端に位置する北海道は、かつて蝦夷地と言われた土地柄です。 しかしこれは本土の人々から見た地域性であり、遠い北国に対する偏見でもあります。 北海道には古くからアイヌ民族が土着の民として生活を営んでおりました。 今でこそ少数派となったアイヌの血筋ではありますが、連綿と民族性を維持してきた理由は、アイヌの人々に伝え残された伝承にあります。 民族の条件の最大のものは、語り伝えられた民族性のルーツを辿れば天地創造に行き着く神話が有るか否かで判断出来るのです。 天地創造から始まる民族性(歴史経路)には、大衆統治の原点回帰が自然の発露で行われます。 アイヌ民族にも立派な天地創造神話が伝え残されています。 しかもその伝承は文章のような記録伝承ではなく、親から子(先祖から子孫)へ物語として語り伝えられた口伝であります。 また畏敬尊敬を集めた長(統治者)による語りべ伝承でありました。 北海道の各地に残されたアイヌ神話には岩石に纏わる神話が多く、熊をカムイ(神々の化身)とする伝承も多いのです。 石は意志であり心の塊りであり、それが魂の正体であるかのような岩石伝承には深い味わいがあります。 こうしたアイヌ神話に似通ったものが南北アメリカ大陸に残るメキシコ神話やアステカ信仰で、マヤ神話の中にも似通った岩石伝承が残されています。 つまりアイヌ民族のルーツは南北アメリカにあり、アメリカ大陸を北上して北方の寒冷地から移住してきた民族が、北海道のアイヌ民族の起源に当たるのであります。 残念ながら口伝には限界があり、物語を永続的に正確な形で連綿と伝え残すことは至難の技であります。 しかしそれでも文跡ではなく口伝を大切にしてきた背景には、人々の暮らしの中に相互の絆(信頼関係)が深く、会話を大切にして結ばれてきた民族性であったのでしょう。 天地創造神話を柱として皆の魂を集約する力が、アイヌの民族精神にも流れていたのであります。 本州から離れた蝦夷地であったからこそ、永らく本土で続いた時の権力者間での政争に巻き込まれなかったアイヌの歴史も、近代に至っては本州からの多移住で徐々にアイヌの民族精神が辺境に追い遣られた感があります。 歴史の深淵にアイヌの民族精神を消滅させないように、大和国日本の大切な魂の一部としてアイヌ伝承も後世に伝え残さなければならないのであります。 |